貸倒引当金を計上する

売掛金や受取手形は将来現金を受けてることができる権利ですが、
支払先が倒産してしまうと回収できなくなってしまいます。
こういう現象を貸倒れ(かしだおれ)と呼びます。
債権のうち何%かは貸倒れるものとして予め費用計上する必要があります。
これが貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)です。

 

引当金って?

貸倒引当金 そもそも引当金(ひきあてきん)って何?
貸倒引当金 将来に発生するであろう費用を前もって費用計上するってことなんだけど、
引当金には4つの条件があります。

①将来の特定の費用又は損失であり、
②その発生の原因が当期以前に起因し、
③発生の可能性が高く、
④その金額を合理的に見積もることができる

この条件を満たす場合、当期の負担に属する費用を引当金として計上します。
これも一会計期間の収益と費用を対応させる意味合いがあります。

貸倒引当金 先ほどの売掛金・受取手形の貸倒れについて考えてみましょう。

①売上債権は将来的に回収できない場合損失となります。
②当期に得て、来期以降に回収する予定の債権の場合、これに該当します。
③毎年数%発生するものです。
④大体の確率が判明しているので、合計金額に乗じると金額を算定できます。

日商簿記3級で学習する引当金は貸倒引当金だけですが、
他の引当金としては、売り上げた商品の返品に対する返品調整引当金、
製品保障のための製品保障引当金、など様々なものがあげられます。

 

しかし、引当金は偶発事象に関しては計上することができません。
例えば台風による被害損失は引当金とすることはできません。

貸倒引当金 へ~。
でも毎年台風が発生して被害が出てる地域とかだったら、4つの条件に該当しそうだけど。
貸倒引当金 ん~、そんな気がしないでもないけど、
そもそも台風の発生は②の「発生原因が当期以前に起因している」には当てはまらないし、
④の「金額を合理的に見積もる」こともできないでしょ。
来年の台風の規模を予測して、その被害総額を算出、なんてとても合理的とは言えないと思うよ?
貸倒引当金 あ~、そうか。
貸倒引当金 当期以前の取引が原因で将来費用や損失が発生する可能性が高いから、
当期の費用に該当する分は発生する前の段階(今のうち)に費用計上しちゃえってことです。
そのまんまですけど(^^;
とりあえず例を見ていきましょう。

 

貸倒引当金の仕訳

■例:売掛金の期末残高50,000円と受取手形20,000円に対して2%の貸倒れを見積もった。

費用の増加→(貸倒引当金繰入)  1,400 / (貸倒引当金)  1,400 ←評価勘定

金額の計算式は(50,000+20,000)×2%=1,400です。

費用の勘定として貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)を用います。
貸方(右側)の貸倒引当金は売掛金・受取手形から控除する形で貸借対照表に表示されます。
資産のマイナスを意味すると考えればいいでしょう。

 

実際に貸倒れが発生した場合の仕訳

前期以前から貸倒引当金を設定している場合、実際に貸倒れが発生した際の仕訳を考えます。

■例:得意先のキリン商店が倒産したため、同店に対する売掛金20,000円が貸倒れになった。
なお、貸倒引当金残高が40,000円ある。

評価勘定→ (貸倒引当金)  20,000 / (売掛金)  2,000 ←資産の減少

実際に売掛金が消滅してしまったので、貸方(右側)に売掛金を記述します。
借方(左側)には貸倒れた時のために用意していた貸倒引当金を使用します。
売掛金を失って損失が発生しているのですが、ここでは費用計上をしていません。
前期の決算整理で貸倒引当金を計上する際に、すでに費用計上しているからです。

 

ここで注意が必要なのは、この貸倒れてしまった売掛金が前期以前のものだということです。
当期に売り上げて得た売掛金が当期のうちに貸倒れてしまった場合は貸倒引当金を使いません。
貸倒損失(かしだおれそんしつ)という費用勘定を用います。

例をあげましょう。

■例:得意先のキリン商店が倒産したため、同店に対する売掛金20,000円が貸倒れになった。
前期に売り上げた売掛金は15,000円、当期分は5,000円である。
なお、貸倒引当金残高が40,000円ある。

評価勘定→ (貸倒引当金)  15,000 / (売掛金)  20,000←資産の減少
費用の増加→(貸倒損失)     5,000 /

貸倒引当金が40,000円もあるんだから借方全部を貸倒引当金にすればいいんじゃないの?
と思いがちですが、引当金の意味を考えれば違和感があるはずです。

引当金は、引当金を設定した会計期間に対応する費用・損失です。
現在帳簿上残っている貸倒引当金は
前期以前の売掛金・受取手形に対して発生する貸倒れを見越して費用計上されています。
(当期分に対する引当金は当期末に設定されるので期中にはまだ存在しません)

当期手に入れた売掛金・受取手形を対象とはしていないのです。
だから当期発生した債権が貸倒れてしまっても、
前期用の貸倒引当金を使用することはできません。
明らかに変なんです。

簿記3級では売上債権の前期分、当期分の区別を問われることはないと思いますが、
引当金の意義が理解できていれば、無理に暗記しなくても問題は解けるのではないでしょうか。

 

と、先に余計な話をしてしまいましたが、
前期末に設定していた貸倒引当金を超過して、前期以前の債権が貸倒れた場合も
貸倒損失を借方に書いて費用計上します。

 

決算整理時に前期分の貸倒引当金が残っている場合

引当金は発生の可能性が高い将来の費用・損失のために用意するものですが、
いくら可能性が高くても、必ずしもその全てが貸倒れるわけではありません。
逆に設定していた額を超過して貸倒れることもあり得ます。

■例:売掛金の期末残高300,000円に対して、3%の貸倒れを見積もった。
 ただし、貸倒引当金が2,000円ある。

費用の増加→(貸倒引当金繰入)  7,000 /  (貸倒引当金)  7,000 ←評価勘定

この例は期末に貸倒引当金が余った状態です。
次期の損失のために、300,000×3%=9,000円を引当金とするべきなのですが、
2,000円が余っているので、今回は引当金を7,000円追加するだけでOKです。

このように、足りていない分を補充するタイプの仕訳を差額補充法と呼びます。
他の仕訳方法には洗替(あらいがえ)法があり、これは引当金が余っていれば
それらを全て逆仕訳で一旦ゼロにしてから、新たに次年度用に引当金を設定します。
これは3級では扱われないため、ここでは割愛します。

 

さらに期末に貸倒引当金がもっとたくさん残っている場合を考えてみましょう。

■例:売掛金の期末残高100,000円に対して、3%の貸倒れを見積もった。
 ただし、貸倒引当金が5,000円ある。

評価勘定→(貸倒引当金)  2,000 /  (貸倒引当金戻入)  2,000 ←収益の増加

この例では100,000×3%=3,000円を貸倒引当金とすべきなのですが、
貸倒れが予想よりも発生しなかったため5,000円も残っています。
追加するどころか余りまくっています。

ここで、「余裕をもって5,000円のまま引当金を設定しておこう」とはせずに、
本来あるべき引当金の額に修正してやる必要があります。
ここで用いる貸方の収益の勘定は貸倒引当金戻入です。

 
 
 


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