「製品1個の原価を求める」という工業簿記の目的が分かったところで、
原価の要素について学びましょう。
製品の原価は「材料費・労務費・経費」の3つで構成されています。
なにか例があった方がイメージしやすいので、今回は私の好きなベイクドチーズケーキで考えましょう。
5回以上作っているお菓子です。美味しいです。お勧めです。
炊飯器を使うと簡単ですので、ぜひ作ってみてください。
さて、まずはベイクドチーズケーキを作るために必要なものを書き出してみましょう。
【材料】値段は大体です クリームチーズ 250g 500円 生クリーム 200cc 350円 小麦粉 30g 7円 砂糖 100g 23円 卵 2個 60円 レモン汁 大さじ2杯 5円
【労力】 労働時間1時間×時給1,000円=1,000円
【調理器具】 オーブン 20,000円 泡だて器 500円 ボウル 500円 軽量カップ 400円 プラスチック製のヘラ 400円 菜ばし 100円 クッキングペーパー 5円
【その他】 オーブンの電力 水道の水(調理器具を洗うため) キッチン(建物の一部)+キッチンの電灯
作り方によっては色々変わるでしょうが、とりあえず上記の物や労力でチーズケーキができるはずです。
これら一つ一つをお金に換算した価値が分かれば、その合計値=チーズケーキの原価となります。
単純な例ですが、紛れもなくこれが原価計算です。
とりあえず、「材料・労力・調理器具・その他」と一般的な分類わけをしてみましたが、
簿記ではこれらを3つに分類わけしています。
材料費・労務費・経費の3つです。
それぞれの意義は以下の通りです。
材料費 … 物品を消費することによって発生する原価
労務費 … 労働力を消費することによって発生する原価
経費 … 材料費、労務費以外の原価要素を消費することによって発生した原価
ですので、チーズケーキの原価要素を分類すると次のようになります。
材料費 … 材料(小麦粉、卵など)、調理器具 労務費 … 労力 経費 … 電力、水道料金、キッチン、キッチンの電灯
・・・・・・
・・・
調理器具は消費してね~じゃねーかヽ(`Д´#)ノ
と思われるかもしれませんが、消費といっても必ずしも使ってなくなってしまうわけではありません。
耐用年数とか使用回数に限りがあるはずなので、まぁ、少しずつ価値は削れていってるんでしょうけど。
ともかく、何か物品(形あるもの)を使うと材料費になる、と覚えておくといいと思います。
さて、分類わけが出来たところで、早速このケーキ一つの原価を計算してみましょう。
物事を解決していくときはまず分かるところから解いていくのが基本ですね。
とりあえず材料費である小麦粉とか調理器具は分かり易いです。
書き出していきましょう。値段は上記の通りです。
【材料費】 材料 … 945円 調理器具 ・・・ 21,905円
次に分かりやすそうなのは、人件費でしょうか。
大体時給1,000円として1時間で1,000円です。
【労務費】 労力 … 1,000円
最後に電気料、水道料です。
一ヶ月の請求額は大体分かりますが、
チーズケーキ1つを作るのにどれだけ消費したかは
ちょっと把握しにくいですね。
とりあえず5円にしときましょうか(^^;)
【経費】 水道料、電気料など … 5円
さて、これでチーズケーキ1つを作るのにかかった原価が出揃いました。
【材料費】 … 22,850円 【労務費】 … 1,000円 【経費】 ・・・ 5円
合計は23,855円です。
( ゚Д゚;)!
ありえないですね。
チーズケーキ1つに2万円以上かかっていたら商売になりません。
何が変なのでしょうか?
・・・調理器具ですね。
クッキングペーパー以外は何度も使用するものです。
購入価額全てを今回作ったチーズケーキ1つの原価に算入するのは明らかにおかしい。
例えば電子レンジ(オーブン)を1日3回で5年間使用するなら約5,500回使うことになります。
(ちなみに私の実家の電子レンジは10年以上使ってます。長持ちですね)
つまり一回の原価は20,000円÷5,500回=3.6円≒4円です。
チーズケーキにかかるのは20,000円ではなく4円が正解です。
他のボウルやヘラなども同様です。
再考すると全部で10円くらいでしょうか。適当ですが(この適当にならざるを得ないところが結構重要です)。
これでもう一度チーズケーキ1個の原価を求めると
【材料費】 … 950円 【労務費】 … 1,000円 【経費】 ・・・ 5円
合計で1,955円です。
大分、それっぽい数字になりました。
まだ若干高い気がしますが、これは人件費が結構かかっているからです。
商売を考えるなら大量生産をすることでもっと時間を短縮できるでしょうから
原価はおそらく1,500円以下にできると思います。材料をケチれば1,000円でもいけるかな?
さて、チーズケーキを通して材料費、労務費、経費の具体例を見てきました。
何か物品を使えば材料費。
人が働いたら労務費。
それ以外(電力料、水道料、税金とか)は経費。
こんな感じに考えていればいいと思います。
ところで、原価がハッキリと確定しているものと、曖昧なものがありました。
ハッキリしているのは小麦粉など材料と労務費です。
曖昧なのは調理器具と経費です。
前者はチーズケーキ1個にだけ使用されたものであり(簿記上、直接費と呼びます)、
後者は他のことにも使っているものです(簿記上、間接費と呼びます)。
材料費、労務費、経費の下にさらに直接費と間接費の2つの分類わけがあります。
原価を計算する上で問題となるのはこの間接費です。
次頁で直接費と間接費について学びましょう。
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