前回、商品売買の仕訳には2通りあることを説明しました。
分記法と三分法でしたね。
日商簿記検定3級を受験する上で分記法の仕訳方法も一応覚えておいてください。
ただし、問題に指示がない限り、三分法を使うのが普通です。
じゃあ、今回は三分法の続きを説明します。
うい~
そもそもなんで三分法なんて名前なのか?ですね。
それは使う勘定科目が3つだからです。
【売上】と【仕入】と【繰越商品】の3つです。
先に説明したとおり、商品を仕入れたら仕入勘定、商品を売上げたら売上勘定に記帳していきます。
(勘定科目のことを~~勘定と呼ぶのが一般的です)
では繰越商品とはなんでしょう?
これは名前のとおり手元に持っている商品を意味します。
?
商品勘定だったら分記法にでてきたんじゃ・・・。
結局同じなの・・・?
そう思われるかもしれませんが、【繰越商品】は基本的に期首と期末のみに登場する勘定で、
分記法のように期中の売買取引時に現れることはありません。
期末に残っている商品を認識するための勘定、だと思ってください。
では、繰越商品の仕訳はどんなかんじなのでしょう。例を見てみましょう。
例:
■期末に残っていた商品在庫は5,000円分だった。
資産が増→(繰越商品) 5,000 / (仕入) 5,000←費用が減
となります。
ちょっと仕訳では分かりにくいかもしれませんね。
仕入勘定を図で見たら、感覚的に理解しやすいと思います。
どうでしょう?
これは前回説明した売上原価の計算式と同じことです。
当期仕入―期末商品=売上原価
・・・まだ、上の仕訳とこの図の関連が掴みにくいかもしれませんね。
もうちょっと時系列的に見てみましょう。
期中に商品を仕入れるたびに仕入勘定の借方に金額が積み上がっていきます。
■仕入勘定
■仕訳
費用が増→(仕入) 5,000 / (現金) 5,000←資産が減
ここで注意してもらいたいのは、
この仕入の借方(左側)は現在保有している商品在庫ではない、ということです。
あくまで仕入れた総額にすぎません。
この仕入れた商品は、期中に他の会社や消費者に販売されているので、
帳簿上は分かりませんが、減少しているはずです。
この点が分記法との違いですね。
そして期末に在庫(棚卸高(たなおろしだか)とも呼びます)の確認をします。
これが最初に見た繰越商品の仕訳に相当します。
資産が増→(繰越商品) 5,000 / (仕入) 5,000←費用が減
ちゃんと仕入勘定が貸方(右側)に書かれてますよね。
そうしたら、後はもう分かりますね。
仕入勘定の残高が売上原価(当期に売れた商品の原価)に相当する、というわけです。
細かいところを勉強していると、時々忘れてしまいますが、
会計簿記の最終目標は貸借対照表と損益計算書を作成することです。
大丈夫ですね?
企業の財政状態および経営成績を示さなければならないんでしたね。
売上原価を求めるのは経営成績を理解するため。
期末商品を調べるのは財政状態を知るためです。
なんでこんなことやってんだろ?と思ったら、このことを思い出してください。
必ず意味はありますから。
さて、今までの説明では仕入勘定の借方に当期仕入分しかない状況を考えましたが、
もし期首に商品在庫があった場合(この方が普通だと思います)は
どんな仕訳をすることになるでしょう?
結論から言うと、期末の仕訳の逆を行います。
費用が増→ (仕入) 5,000 / (繰越商品) 5,000 ←資産が減
これは前期末に在庫として残っていた繰越商品を当期首に仕入に振替(ふりかえ)ているんです。
(振替とは実際にモノの移動、例えば物品の売買など、をしていない状態で
勘定の名前だけを変えている、と考えてください。
お金の移動が行われたわけではありません)
仕訳だけ見ると ? な感じですね。
仕入勘定、繰越商品勘定の期首の状態を見てみましょう。
仕入勘定は空っぽです。繰越商品の借方には前期末の商品在庫が計上されています。
仕入勘定が空なのは分かりますよね?
仕入は費用の項目です。
つまり経営成績に属する勘定です。
ところで、経営成績っていつの成績ですか?
今日? ここ一週間?
・・・・・・
一会計期間の成績、ですよね。
とりあえず一会計期間を一年間(4/1~3/31)と考えた場合、3/31までの一年間の成績を発表します。
そして次の一年間の最初の日、4/1の段階で成績はまっさらな状態になります。
なりますよね?
始めから、今年は利益が+1,000万円でスタートです!
とか、ありませんよね? ゲームじゃないんだから。
収支±0の状態からスタートして、期末にいくら儲かったのかを計算するんです。
だから、収益、費用に属する勘定は期首には0になっているはずです。
では繰越商品はどうでしょう。
期首に前期末分が計上されています。
繰越商品は資産です。財政状態を知るための一要素ですね。
なんらかの資産価値が認められるもので、成績のように概念的なものではありません。
なので、一会計期間が終わったからといって、翌日にいきなりなくなるものではありません。
さて、三分法では仕入勘定でもって売上原価を求めているので、
将来売上原価になる繰越商品を一度仕入勘定に戻してやらないといけません。
だから勘定連絡図(下図のような勘定の流れを意味します)で示すとこんな感じになります。
(期首商品を前期繰越としていますが、今はそれほどこだわらないで下さい。意味は同じです)
■仕訳
費用が増→ (仕入) 5,000 / (繰越商品) 5,000 ←資産が減
今までの分を含めて一年間の仕入勘定を考えると以下のようになります。
さて、これで商品売買の基本的な仕訳は終わりです。
最後に一年間の流れをイメージしてみましょう。
①まず商品を仕入れて
費用が増→ (仕入) 5,000 / (現金) 5,000 ←資産が減
②商品を売上げます。
資産が増→ (現金) 8,000 / (売上) 8,000 ←収益が増
期中に①と②を繰り返し、期末に期首商品と期末商品の仕訳をします。
③期首商品の振り替え
費用が増→ (仕入) 1,000 / (繰越商品) 1,000 ←資産が減
④期末商品の振り替え
資産が増→ (繰越商品) 2,000 / (仕入) 2,000 ←費用が減
この③、④の期末に行う期首商品・期末商品の振替作業を決算整理と呼びます。
決算整理は一年間蓄積してきた仕訳を決算書作成のために、適正に修正してやる作業を意味します。
これに関しては別途章を設けて説明します。
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