手形ってどんなもの?

簿記の勉強をしていると、
手形を受け取ったら「受取手形」、支払ったら「支払手形」という勘定科目を習います。

手形というのは代金の支払いに使えるものなんだな~と、なんとなく想像できます。

でも実際に手形がどんなものなのかは
現物を見たり触ったりして実務をやってみないと、なかなかイメージしにくいものです。

私は実務で携わったり、手形の本を読んだりしたので
ざっくり手形についてまとめてみようと思います。

手形の種類とその外観

手形には様式の種類として「約束手形」と「為替手形」の2種類があります。
これらの外観を見てみましょう。

約束手形 表面

為替手形 表面 

手形の裏面  

 

手形はこのようなちょっと厚めの紙です(コピー用紙2~3枚分?)。
昔は文房具屋さんで売られていたそうですが、今は取引銀行から専用の手形帳を購入します。

手形の表面の色合いや柄は銀行によって異なりますが、書いてある文字や罫線はほぼ共通です。

手形の歴史・誕生

「手形」というのは元々「手の形」のことです。

字を書けない人が何かの約束をする際の証拠として、
手の形(または指の形)を紙に写したのが始まりのようです。


現在利用されている手形の原型ができたのは12世紀ごろの中世ヨーロッパ。
当時、貿易が盛んだったイタリアの商業都市で利用され始めました。

このあたりは様々な国の物品が集まり、商品売買が行われていました。
すると当然、各国の通貨が集まり、それらを交換する必要が生じます。
そこで両替業(のちの銀行)が誕生しました。
両替という言葉は、別々の国の通貨を交換する、という意味だったのです。


ところで貿易をするということは多くのお金を扱います。
商人は遠く離れた都市からやってきて商品を買ったり売ったりして、また自分の都市へ戻ります。
陸路や航路、長い旅路で多量の現金を持ち運びすることは危険が伴いますし、負担にもなります。
そこで考案されたのが、銀行を介しての為替、送金でした。

例えば、X国の商人Pさんは地元にある銀行のA支店でX国通貨でお金を預けます。
そして、目的地Y国にあるB支店からY国通貨でお金を引き出す手続きをし、書面を受け取ります。
すると商人PさんはY国までの旅路、現金を持ち運ばなくてもよく、 商売の目的地でお金を引き出すことができます。


こんなサービスが始まったのです。
書面を発行した人が、現金を支払う約束をした書面。

これは現代の「約束手形」に近いものです。

 

13世紀ごろになると、現金を受け取った銀行がお金を払うのではなく、
代わりにお金を払ってほしい」と別の人に委託する手段がとられるようになりました。


先の書面との違いは、 書面を発行した銀行(甲銀行)と、書面を呈示した人にお金を支払う銀行(乙銀行)とが異なる点です。

海外へ送金する場合、この方法の方が便利だったので、こちらが発展していきました。
これが現代の「為替手形」の起源です。

 

このように、手形は「一定の期日に一定の金額を支払うことを約束した文書」なのです。

手形の記載事項

約束手形の記載例

手形は支払期日に一定の金額を支払うことを約束した文書です。

なのでそれを明確にするために「いつ、誰が、誰に対して、いくら支払うか」を記載しなければいけません。

これらを記載した約束手形の例が以下のものです。

約束手形を振り出すには次の6か所を記載しなければいけません。
(手形を発行して相手に渡すことを「振り出す」と表現します)


①受取人(手形を渡す相手)の名前
②支払う金額
③振出日(発行した日)
④振出地または振出人の住所
⑤振出人の署名・捺印 (お金を支払う人)
⑥支払期日(お金を支払う日)

これら以外の箇所は手形帳を交付する銀行が記載してくれています。

手形の一番下に暗号のようなものが書かれていますが、
これは金融機関や店コード、口座番号などを示していて、
交付された人物が特定できるようになっています。

 

この手形を受けとった(株)トラ商店は平成28年7月31日に
大阪府大阪市にある●●銀行大阪本店から現金1,000,000円を受け取ることができます。

金額欄はチェックライター、手書きなら漢数字で

手形の金額欄は手書きでアラビア数字(1,2,3など)を書いてはいけません

金額欄にはチェックライターという機器でアラビア数字を入力するか、
手書きなら漢数字(壱、弐、参など)で書かなければいけません。

多くの人がチェックライターを使うのは変造を防ぐのに優れているからです。

チェックライターでは「¥1,234,000※」このような文字が記載されます。

手書きでは「金百弐拾参万四千円也」と書きます。
頭の「金」と数字の間は隙間なく書くようにしましょう。
「金 百万円也」なんて書いていると「金九百万円」なんて書き換えられてしまうかもしれません。

支払期日が祝祭日の場合

支払期日が法定の休日(祝祭日や土日)の場合、支払いが行われるのは翌営業日になります。

署名・捺印はどうする?

会社の署名は「会社名代表者の肩書代表者個人」を書かなければいけません。

会社名だけでは無効です。
また、代表者個人の名前だけではその個人の署名になってしまいます。
肩書が抜けていると、会社なのか個人の署名なのかが不明です。

そして銀行に届け出ている印鑑を捺印します。

為替手形の記述例


①支払人(引受人)の名前(お金を払う人)
②支払う金額
③受取人(お金を払ってもらえる人)
④振出日(発行した日)
⑤振出地または振出人の住所
⑥振出人の署名・捺印
⑦支払期日(お金を支払う日)
⑧引受人の住所・署名・捺印

為替手形は名前を書く欄が3か所あります。

手形の振出人は支払人(引受人)に対して、受取人にお金を支払う旨依頼します。
手形を作成して、⑧の欄を引受人に記入してもらい、それを受取人へ渡します。

約束手形と記載内容が異なるので作成時には注意が必要です。

手形は為替手形の使い方で発展してきたのですが、
現代では、使われる手形はほとんどが約束手形のようです。
(私も実務をやっていて、為替手形はたまにしか見ません)

 

手形を振り出すには

手形を振り出すためにはまず銀行に当座預金口座を開設しなければいけません。

当座預金口座とは利息のつかない決済用の口座のことです。

当座預金口座があれば銀行が手形用紙を交付してくれます。

手形は銀行が交付した用紙を使わなければ取り扱ってくれません。
この様式を使いなさい、という決まりは法律で定められているわけではありません。
法律上はコピー用紙を使っても問題はないのです。
しかしそれでは本当に現金を支払ってもらえるかどうか疑わしい手形が世に出回る恐れがあります。
そこで全国銀行協会が手形用紙を統一的なスタイルに定め、銀行がそれに従っているのです。

これを統一手形用紙制度と呼びます。

この制度が布かれるまでは手形用紙は文房具屋さんで売られていました。
しかし、お金が支払えないくせに手形用紙を買ってきて、それを取引先に渡すという
悪質な行為が横行したため本当に信用力のある人だけが
手形の振り出しをできるように変えたのです。
(それでもお金を支払えないケースはゼロにはできませんが・・・)

 

手形には収入印紙が必要

手形には収入印紙をはる必要があります。
印紙をはっていなくても手形の効力は有効ですが、印紙税法上の脱税となってしまいます。

印紙をはるのは手形の作成者です。
そして通常、制作者は振出人です。

印紙税額は手形の金額に応じて変化するので、そのときの法律に沿った金額の印紙をはりましょう。

はった印紙には消印をして、その印紙が二度と使えないようにします。


消印は三文判でも手書きによるサインでもなんでも構いません。
場所も上下左右どこに押しても問題ありません。

 

手形が振り出されて取り立てられるまでの経路


1)手形を振り出したら受取人は
 取引銀行へ手形の取り立てを依頼します。
 (手形の金額を期日に払ってもらうことを
 「取り立てる」と表現します)
 支払期日前に銀行に持ち込んだ方が安心です。

2)取り立てを依頼された手形は
 手形交換所という場所に集められ、
 銀行間で交換をします。
 (いちいち相手の銀行へ行って手形を呈示して
 現金を払ってもらって、ということを
 やるのは手間だから一か所に皆が集まる方が
 効率的なので手形交換所ができました)

3)持ち寄られた手形の金額の差額が
 それぞれの銀行が日本銀行に持っている
 当座預金振替でお金のやり取りが行われます。

 例えば、甲銀行がもって来た
 他の銀行宛ての手形の総金額(100億円)、
 他の銀行が持ってきた
 甲銀行宛ての手形の総額(90億円)がある場合、
 甲銀行の当座預金が差額の10億円増加します。

4)手形交換が終わると、
 各銀行は自行宛ての手形を持ち帰り、
 その手形を振り出した人から現金を支払ってもらいます。
 これは振出人の当座預金から減らす方法で行われます。

5)もし振出人の当座預金に十分なお金がない場合、
 その手形を不渡りにして手形交換所に届け出、
 その手形を持ち込んだ銀行に返します。

 
 

手形の便利な機能

手形の支払はほぼ確実

手形は支払いが確実に行われるように工夫がなされています。

手形の振出人が期日に現金を支払わないことを不渡り(ふわたり)と呼びます。

不渡りが出るということは手形に対する信用を失わせることに他なりません。
そこで、6か月間に2回以上の不渡りを出した者には、
銀行との取引を中止させるという制裁が下されます。
これを取引停止処分と呼びます。

取引停止処分は、2年間、当座預金取引および貸付の取引を禁止されます。

 

当座預金口座を使えなければ、手形・小切手の振り出しはできず、
貸付もしてもらえないので資金的に行き詰まることが目に見えています。

また、不渡りを出したことはすぐに世間に広まってしまいます。
あの会社に商品を売ってもお金を払ってくれない可能性が高い、
そんな噂が流れてしまったら誰も相手にしてくれません。
すると商売はできなくなり、結果倒産の憂き目を見るのです。

誰も倒産したくないので、手形の不渡りは出さないよう気をつけます。
つまり手形は支払期日が到来すればほぼ確実に支払ってもらえるのです。

これは単なる売掛金や貸付金よりも有利な点です。

 

形は譲渡が簡単

手形は譲渡が非常に簡単です。
裏面に記名(名前のゴム印を押す)または署名して
届出印を捺印するだけで、
別の人へ譲渡することができます。
これを裏書譲渡と呼びます。

例えば、
AさんはBさんから商品10,000円を購入しました。
Aさんの手元には、Cさんが振り出した
10,000円の約束手形があります。
そこでAさんはCさんから受け取った手形をBさんに渡します。
これでAさんの支払いは完了です。

売掛金ではこうはいきません。
単なる債権では譲る人と譲り受ける人とが
譲り渡す約束をして、
債務者に対して内容証明郵便で
通知をする必要があります。


手形の譲渡はこれに比べればはるかに簡単です。

手形はその書面自体に権利がのっているとされます。
ですから手形が別の人の手に渡れば、
お金を支払ってもらえる権利は次の所有者のものとなるのです。

ただし裏書すると支払いの義務を負うことになる

手形の裏書人は、譲り渡した相手およびそれ以後の取得者に対して手形の支払いを担保する責任を負います。
まず第一に支払いをしなければならないのは手形の振出人ですが、
振出人が支払わない場合は裏書人が支払いをすることになります。
これを裏書の担保的効力と呼びます。

また、裏書人のこのような支払義務のことを遡求義務(そきゅうぎむ)といいます。

ちなみに、裏書人は振出人が支払わなかった場合、支払わなければいけませんが、
仮に支払わなくても取引停止処分にはなりません。

手形を売却して資金繰りに役立てる

手形は銀行など金融機関に買い取ってもらうことができます。
この際、支払期日までの利息を差し引いて現金化されます。
このように手形を支払期日前に現金化することを手形割引と呼びます。
この差し引かれる利息を割引料といいます。

手形は現金化されるまでに時間がかかります。

しかし会社は仕入れ先に対する支払い、従業員への給与支払い、税金の支払い等のために、
常に現金を必要としています。

時には将来ではなく「今」現金が必要になることがあります。
そんな時に手形を現金に換えることができるのはとても便利なことです。

 

裏書の仕方

受け取った手形は支払いの手段として使ったり、
手形を担保に銀行からお金を借りたり、
銀行に手形を買い取ってもらうなど、
色々な利用方法があります。

これらをする場合、手形の譲渡が起きますが
手形の譲渡は裏書という方法を用います。
(銀行に取立の依頼をする場合も裏書をします)

手形の裏書は手形の裏面に
自分の住所、署名、捺印すれば完了です。
(法律上、住所はなくても良いようですが、書いておいた方が無難でしょう)

上で例示した約束手形を受け取ったトラ商店が
仕入れに対する支払い手段としてこの手形を使う場合、
このような記名捺印、押印をして相手に渡します。


裏書の例


裏書欄には「被裏書人」という枠があります。
裏書譲渡する相手の名前を記入する欄です。

ここに記入しているものを記名式裏書、空欄のままにしているものを白地式裏書と呼びます。

(ちなみにこの記名式裏書、白地式裏書というのは貿易取引で出てくる船荷証券でも使われる用語です)

裏書は連続していないと不渡りになる


被裏書人と次の裏書人の名前が
一致していないと、手形の所持人は
手形の権利者として扱われません。

このように裏書がとぎれることなく
続いていることを裏書の連続といいます。

被裏書人の欄が空白の状態の場合は、
次の裏書人であるとみなされます。


裏書の抹消の方法


裏書を抹消するのは
どんな方法でも問題ありません。

一般的には斜線や横線を引いて抹消します。

その上に捺印する必要はありません。

鉛筆で抹消しても有効とされています。

 

捺印部分だけを抹消しても、
裏書人の署名が残っていると
裏書を抹消したことになりません。


手形の裏書欄が全て埋まっている場合はどうする?

手形の裏書欄がすべていっぱいになっていたら
手形の下部に紙を貼りつけて、それに裏書をします。

一般的に手形の裏面をコピーして、それを貼りつけます。



 

受け取った手形を取り立てる方法

手形はその性質上、人の手を渡っていきます(次々に他の人に譲渡されていく可能性がある)。
これでは支払いをする側からすると一体誰に支払えばいいのか分かりません。
そこで支払いをしてもらうために、
所持人が支払義務者に手形を見せて権利者であることを示す必要があります。

これを支払呈示と呼びます。

手形を呈示して支払いを受ける作業は、
自分の取引銀行に依頼してやってもらいます。

受け取った手形は支払期日(厳密には支払期日の2日後までが呈示期間)までに
取引銀行の窓口へ持って行って取り立ての依頼をします。
銀行に取立の依頼をする際、依頼用に裏書(うらがき)をします。

この裏書は取立てのための裏書で取立委任裏書と呼びます。
(譲渡のための裏書とは違います。やっていることは同じですが)

裏書 

取り立ての期間

取立の期間(呈示期間)は手形に記載された支払期日1日だけではなく、その後の2日間を含む3日間です。

手形はこの呈示期間内に支払呈示をしなければいけません。
確実にこの期間内に呈示できるよう、事前に銀行に取立を依頼しておくべきでしょう。

呈示期間を過ぎてしまったらどうなる?

もし手形の取立を忘れて、呈示期間を過ぎてしまった場合はどうなってしまうのでしょう?

呈示期間を過ぎても、振出人に対して請求することは可能です。
手形の消滅時効は支払期日から3年間です。

呈示期間が過ぎてしまった手形も、とりあえずは取引銀行に取り立ての依頼をしましょう。
呈示期間を過ぎていても、振出人が了承すれば支払ってくれます。
もしも呈示期間経過後を理由に支払拒絶をされたら振出人の営業所へ行き、直接手形を呈示して支払い請求をします。

 

取立は本来、手形に記載されている支払場所、つまり振出人の取引銀行で支払ってもらえます。
振出人は呈示期間に手形金額を当座預金に用意しておかなければいけません。
ところで、呈示期間を過ぎてしまった手形は、所持人がいつ支払いの請求をしてくるかが分かりません。
そんなもののためにお金を当座預金口座に入れっぱなしにしておくのは振出人にとって迷惑な話です。
そこで呈示期間を過ぎてしまった手形は、銀行に呈示するのではなく、振出人の営業所に直接呈示しに行きます。
ただ、上述した通り、銀行を介して取立をしても払ってくれることもあるので、
とりあえず銀行に依頼してみて、ダメなら直接相手の営業所を訪ねる、という流れが良いでしょう。

 

呈示期間内に取立をしないことで被るデメリットは他にもあります。

裏書のある手形の場合、振出人が支払いをしないときが問題です。
振出人が支払えないときは、裏書人に支払いを請求できるのですが、
裏書人に請求できる要件が
「呈示期間に正式の手形金請求をしたが、支払いを拒絶された」
ことなので、呈示期間に支払呈示しないと裏書人に請求できないのです。

呈示期間に取立をしないでいて得なことは一切ありません。
なるべく早め早めに取立依頼をすべきです。

 

白地手形は気を付けろ!

手形に金額、支払期日、振出日、受取人などが記載されないまま振り出されたものを
白地手形(しらじてがた)と呼びます。

白地手形は完全な手形ではないので、厳密に言えば、取立に出しても手形金の請求をすることができません。
しかし、多くの場合、白地のまま決済されるようです。

 

金額や支払期日が白地というのは、振出人にとって危険が大きいので滅多にありません。
(受取人に自由な金額や支払期日を書かれてしまうから)

しかし、振出日、受取人が白地の手形は結構あるようです。
(私は実務でたま~に振出日が白地のものを見かけることがあります)

振出人が「白地手形は適法な手形金の請求ではない」といって、
支払を拒否することはできますが、
手形の所持人が白地部分を補充(白地部分を書くこと)して再度取り立てに出すことが予想されるので、
そのまま支払っているようです。

しかし、白地手形は補充するように心がけましょう。

 

手形の白地部分を補充できる権限を補充権といいます。
白地手形を受け取った人は誰でも補充することができます。

 

裏書人がいる白地手形を受け取ったら・・・

白地のある回り手形を受け取ったら、ちゃんと補充すべきです。

呈示期間に取立をしなければ裏書人に対して請求できない。
そう上述しましたが、これは呈示期間だけの話ではありません。

「呈示期間に正式の手形金請求をしたが、支払いを拒絶された」

これが裏書人に請求するための要件です。
「正式の手形金請求」ということは、手形の記載事項が正しくなければいけないということです。
白地手形は、法律に定められた書くべき内容が抜けている状態なのです。

そんな手形を取立てて、もし不渡りになったら、どうでしょう。
せっかくお金を払ってくれたかもしれない裏書人に請求することができないのです。

ちょっとしたことでみすみす大金を損することになりかねません。

 

不渡りはどんなもの?

不渡りの原因はいろいろ

不渡り=(お金が払えないから)倒産というイメージがありますが、
不渡り(手形金を支払わない)になる理由はいろいろあります。

取り立てた手形が不渡りになった場合、下のような付箋がつけられ手元に戻ってきます。


1)資金不足 ・・・ 当座預金口座にお金が足りない
2)取引なし ・・・ 当座預金口座そのものが存在しない
3)契約不履行 ・・・ 「相手が契約に違反しているからお金を払わない」と言って
     支払拒否している場合です。
売買契約を交わしたのに、商品が届いていない場合なんかお金を支払うのはおかしいです。
4)詐取 ・・・ だましとられた手形なので支払拒否している
5)紛失 ・・・ 紛失した手形だから支払拒否
6)盗難 ・・・ 盗難にあった手形なので支払拒否
7)偽造 ・・・ 偽造された手形なので支払拒否
8)変造 ・・・ 変造(百万円を八百万円に書き換えられたなど)された手形なので支払拒否
9)印鑑相違 ・・・ 届出印と異なる印鑑が押しているので支払拒否
10)金額欄記載方法相違 ・・・ 金額欄の数字が適切でないため支払拒否
11)形式不備 ・・・ 振出地や振出人の住所が書いていなかったり、振出人の印鑑がなかったり、手形が無効なので支払拒否
12)裏書不備 ・・・ 裏書人の印鑑がなかったり、連続していないので
13)呈示期間経過後 ・・・ 呈示期間を過ぎて取立に出されたので支払拒否
14)依頼返却 ・・・ 振出人が依頼して交換決済の済んだ手形を返還した場合。

11)~14)での不渡りは、手形の適法な取り立てではないため、取引停止処分の対象とはなりません。

不渡届に対する異議申し立て

手形の振出人が支払いをしなかった、つまり不渡りになると取引停止処分になります。
取引停止処分になると銀行から借り入れができず、
当座預金口座も使えなくなってしまいます。
その後の商売がまともにできなくなる厳しい処罰です。

手形が不渡りになると、支払銀行と持出銀行(手形を手形交換所へ持ち込んだ銀行)から
不渡届が手形交換所に提出されます。
この不渡届によって不渡処分(1回目の不渡処分で不渡報告へ掲載され、
2回目で取引停止処分になります)となります。

しかし契約不履行など、支払わないことに真っ当な理由があるにも関わらず、
取引停止処分になってしまっては納得できません。

 

そんな時は異議申立てをします。
振出人は支払銀行を通して手形交換所に異議申し立てをして、
不渡手形と同額の現金を預ければ不渡処分を受けなくて済みます。

振出人が支払銀行に預けるお金を異議申立預託金といい、
支払銀行が手形交換所に提供するお金を異議申立提供金といいます。

 

手形の状況による種類わけ

商業手形と融通手形

通常の商取引に基づいて振り出された手形のことを商業手形と呼びます。

これに対してお金がないため、知り合いに手形を振り出してもらい
それを銀行に持っていきお金を借りることがあります。
これを融通手形と呼びます。

融通手形は要はお金を作るために手形を借りているのです。

受取手形と支払手形

簿記上の手形は受け取った場合は受取手形
振り出した場合は支払手形と呼びます。

回り手形

手形面上に裏書人がある手形のことを回り手形と呼びます。
他人の間をまわってきた手形という意味です。

担保手形

将来発生する支払いの担保のために振り出した手形のことです。

不渡り手形

取り立てにだしたが、支払いを拒絶された手形のことです。

 

簿記の学習で買掛金から支払手形に振り返る仕訳がある理由

買掛金 10,000 / 支払手形 10,000

こんな仕訳を見たことはないでしょうか。
これは商品などを仕入れた際に一旦買掛金を計上して、
その後、買掛金から支払手形に振り替えているのです。

(例)
4/15 商品Aを10,000円で仕入れた。

仕入 10,000 / 買掛金 10,000

5/20 支払手形10,000円を振り出した

支払手形 10,000 / 買掛金 10,000

取引先ごとにどういった支払い方法(翌月振込、手形、期日現金など)にするかは
事前に決めているはずです。
手形で支払うことが決まっている取引先に対しては、
仕入れと同時に手形を振り出したらいいのではないでしょうか?

私は、そんなことを簿記2級の勉強をしていた当時考えていました。

しかし、仕入れの都度支払手形を振り出すというのは実務上現実的ではありません
事務の手間がめちゃくちゃかかるからです。
これは何も手形に限った話ではありません。
仕入の都度、その支払い金額、支払い方法に沿った処理の実行を行うのは非常に煩雑です。

例えば月に何度も同じ会社から仕入れをしているとします。
その仕入れ一つ一つに対して支払いの処理をしていると、
仕入れの回数分だけ支払い処理を行わなければいけません。
一言で「支払い処理をする」といっても、そこには様々な仕事が付随的に発生するのです。
(銀行振り込みの処理や手形の作成、伝票作成、実行の承認などです)


それではいくら人手があっても足りません。

そこで実務では一定期間、例えば4月26日~5月25日、の間で
発生した仕入れ全てをまとめて一時に処理をします。
そしてこの期間の支払いが6月20日以降に行われる、みたいな処理をします。
もちろんこの期間や、支払日は会社によって違いがあるでしょう。

商品を納入する会社も請求書をその都度発行するのではなく、
一定期間販売したものをまとめて請求します。

仕事を一回にまとめてしまうことで合理化を図っているのです。


 

合理化のため支払い業務を後日に後回りすることは説明はつきます。

しかし商品を仕入れたことは事実です。
それに対する支払い義務が生じているのです。

ならば債務を計上しなければいけません。
そこで一旦買掛金を計上し、手形の振出日になったら買掛金から支払手形へ振り替えるのです。



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Last-modified: 2019-12-19 (木) 17:58:30