部門別個別原価計算を学ぼう

原価の要素を材料費・労務費・経費に分類した後、
原価の発生場所別に分類・集計することを部門別計算と呼びます。
全体よりも小さな部門単位で考えた方が製品の原価を適正に評価できるのでこの計算を行います。

 

部門別個別原価計算とは?

製造工程は色々な場所での活動が関わってきます。
例えば、ケーキ屋さんでケーキ作りを分業しているとすると、

①原材料からスポンジやクリームを作る人
②スポンジやクリームを組み合わせてデコレーションして仕上げる人
③材料の運搬や洗い物などの補助作業をする人

このように3つの部門が考えられます。いや、まぁ他にも色々あるでしょうけど・・・。

この3つそれぞれで製造間接費を分類・集計して、
製品ごとに割り振るのが部門別原価計算です。

・・・・・・
・・・

大事なことなのでもう一度言います。
部門ごとに製造間接費を分類・集計して製品ごとに割り振るのが部門別原価計算です。
あくまで注目するのは製造間接費です。
製造直接費(直接材料費、直接労務費、直接経費)は製造指図書ごとに賦課します。
この点が工程別総合原価計算との違いでしょうか。
(後の章で説明しますが、工程別総合原価計算は部門別計算と同義です)

 

①原材料からスポンジやクリームを作る人
②スポンジやクリームを組み合わせてデコレーションして仕上げる人
③材料の運搬や洗い物などの補助作業をする人

で、この①を製造1班、②を製造2班、③を補助作業班とした場合、
部門別原価計算での原価の流れは以下のようになります。


前回の個別原価計算で示した以下の図と比べて製造間接費のところが少し複雑になっていることが分かると思います。


 

もうちょっと詳しく話すと、製造間接費の中にはどの部門で発生したのかがハッキリしているものと
複数の部門に共通して発生したものとがあります。
ハッキリしているものを部門個別費、ハッキリしないものを部門共通費と呼びます。

製造間接費自体が複数の製品にまたがって配分しにくいハッキリしないものなのに、
その製造間接費の中に部門にハッキリと帰属させることができるものと曖昧なものとがある・・・?

って考えてるとややこしくなってきますね(^^;

しかし製造直接費、製造間接費は製品に直接的に関連性を見出せるかが問題で、
製造間接費を部門個別費と部門共通費とに分ける考え方は、
どの部門で発生した費用なのかを直接認識できるかどうかの話なので
着目している点が全くの別です。

以上を踏まえて、製造間接費の勘定連絡図(勘定の流れを示した図)を見てみましょう。


もう一度先ほどのケーキ屋さんを見てみましょう。

①製造一班:原材料からスポンジやクリームを作る人
②製造二班:スポンジやクリームを組み合わせてデコレーションして仕上げる人
③補助作業班:材料の運搬や洗い物などの補助作業をする人

製造間接費の一つに水道料があります。
このケーキ屋さんでは③の補助作業班が洗い物のために水を使っています。
①と②では使っていないと仮定します。
この場合この水道料は③補助作業班の部門個別費になります。
他には泡だて器。これは様々なケーキの生産に関わるので間接材料費です。
このケーキ屋さんでは①の製造一班が使用しています。
泡だて器は①製造一班の部門個別費です。

次は部門共通費を考えてみましょう。
複数部門が使用している製造間接費は、例えば建物の減価償却費や固定資産税などが挙げられます。
先ほどの水道料も複数部門が使用する場合は部門共通費になります。
部門共通費は適当な基準で各部門に配賦されます。
建物関係の部門共通費であれば各部門の占有面積を配賦基準とするのが一般的です。
店のサイズが100㎡だとして製造一班が50㎡、製造二班が30㎡、補助作業班が20㎡だとしたら、
それぞれ5:3:2の割合で費用を配分することになります。

 

部門個別費を賦課、部門共通費を配賦することで、製造間接費の全てが各部門へ割り振られます。
次はこの部門ごとに分類・集計された製造間接費を製品ごとに配賦したいのですが、
上図を見ると、③補助作業班の右側から緑色の矢印が伸びて①と②に加算されています。

・・・・・・
・・・

せっかく分類したのに、なんでまた足してんだ?

と言いたくなりますが、
それは③補助作業班が補助部門だからです。

 

部門には製造部門補助部門の2種類があると考えます。

製造部門は製品加工に直接従事する部門。
補助部門は製造部門や他の補助部門に対してサービスを提供する部門です。

①製造一班と②製造二班はケーキ作りに直接関わっています。
ですが③補助作業班はケーキ作りの補助はしていますが、ケーキ作りをしているわけではありません。
言い換えると、③補助作業班はイチゴケーキやチーズケーキに直接的には関わりをもっていないのです。
と言うことは、①と②の製造間接費はイチゴケーキに20時間、チーズケーキに30時間費やしたのなら、
20:30のように割り振ることができますが、③はせっかく集計した製造間接費を
どういう基準で製品に配賦すればいいのか分からないってことになります。

 

(´-ω-`;) ドウシタモンカ

・・・・・・
・・・

(*@д@)!!

「③補助作業班⇒製品への配賦」が無理なら
「③補助作業班⇒①、②へ配賦⇒製品へ配賦」にすれば可能じゃね?
これ、すごくね?(*´д`*)

 

・・・と考えついた人が思ったのかどうかは分かりませんが、
製品と直接関連付けることができない補助部門ですが、
製造部門とは関わりがあります(配賦基準を測定できる)。
そして製造部門は製品とのつながりがあるので、
「③補助作業班⇒①、②へ配賦⇒製品へ配賦」とすることで補助部門の製品への配賦が可能となります。

こうして最終的に製造間接費は製造部門に全て集約されます。
最後には必ず製造部門へ集まります。
あとは製品に配賦するだけです。

 

以上が部門別原価計算の概要です。

で実際に日商簿記検定では部門別原価計算はどういう所が問題なのか?
一番計算が複雑なのが「補助部門費の他部門への配賦」です。
上図の緑色の矢印がこれです。
3つ(もしくは4つ)のの計算法があるので、これらにきっちり対応できるようになりましょう。

 
 
 

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